2021/04/10 21:00
私にはもともと「写真を撮る」という習慣がありません。面倒とか嫌いとかではなく、人と比べてあまり"クセ"になっていないのだと思います。
21AW作成期間の半年間、自分自身への日々の宿題のような気持ちで、「光と見つけたら写真を撮る」事を続けてみました。不慣れな行為を繰り返す中でなにか意識が変化したら面白いなと思ったからです。
被写体はなんでも良かったのですが、冬での晴れの日があることが嬉しいという大した事ない理由で決めました。(5年間暮らしたロンドンは冬の間まったくと言っていいほど晴れることがなかったため、日の光への執着が強くなってしまった自覚はあります。)
うまく撮ることを目的とせず、日常の中で見つけ次第、ただ光を収集していく。
半ば習慣化した頃、いつものように壁面に一筋落ちている光を見つけ写真に納めました。それを見た友人が「きれいな影だね」という言葉。 光ではなく、影?
集めた写真を見返していくと確かにそこには全て影があり、というよりもむしろ影の暗さをベースとしていて、同時に存在し、共存していました。光を見つけた時自分が立っていたのは常に影の中。光を集めながらそこには同じ分だけ影がありました。

村上春樹の小説『1Q84』の一説にもこうあります。
"光のあるところには影がなくてはならず、影のあるところには光がなくてはならない。光のない影はなく、また影のない光はない。"あらゆる物事の縮図のようにも思える光と影の関係に次第に関心が向かっていきました。
また、写真という媒体そのものが持っている潜在的な「時間性」にも惹かれました。映し出されているのは過去だけれど、私たちはそこに直接的には写っていない時間の流れやその先の未来に思いを馳せることが出来ます。写真の時間制は一瞬と永遠を作り出していると感じています。
集まっていく光のアルバムから、陰影のコントラストや色彩を採取していき、時間を費やしたことを感じさせる細やかな織り・編み素材を元にコレクションを作りました。今回新しく使用したテンセルとベンベルグは、時間を経ることで姿形が変わっていく素材です。埋めれば微生物により分解され土に還り、その土でまた原料となる木を育てる。一着が生まれた背景だけでなく、その後の物語をも感じ取る事ができるのではないでしょうか。
これまでで最も詩的なコレクションとなりました。お楽しみいただけば幸いです。
*上記ブランドリリースより